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労務管理to労基法

労務管理における労働基準法

1.労務管理における労働基準法の役割

 中小企業のおかれている現状から、中小企業の近代化、合理化が必要であるということ、とくに労務管理の改善が急務であるということはいうまでもありません。

 賃金、労働時間はもちろんのこと、災害補償、安全衛生、寄宿舎の設備等、労働者の職場での一切の待遇(いわゆる一般に労働条件とよばれるもの)の管理が労務管理の中心であり、労務管理の合理化を図るうえからも一番効果が期待できるものであるということも、中小企業の経営が労働力に負うところが極めて大きいことから、容易におわかりのことと思います。

 労働基準法は、その労働条件の最低の基準を定めたものであるところから、労働基準法を守ることが労務管理の第一歩であるともいわれているわけです。

 もちろん、労働基準法の違反がなければ労務管理が満点であるとは決していえませんが、とかく中小企業においては、この労働基準法の定める最低の条件すら守られておらず、むしろ労働基準法は中小企業にとってやっかい視されてきた傾向があります。

 この考え方が誤りであり、激しい経済競争に対処する手段として、かつて中小企業のとってきた労働条件の切り下げによる競争は、中小企業の繁栄にとって最も緊急の課題とされる「体質改善」あるいは「近代化」の方向に対して、まさに逆行するものであることは、前にもふれたとおりで、あらためて付言するまでもありません。

 このことは、単に「労働基準法」についてだけでなく、その他の社会政策立法についても等しくいいうるところであり、それらの立法を無視しては、もはや近代的な労務管理を行うことは不可能であるといえます。

 とくに社会政策諸立法の中でも、労働者の最低労働条件を保障する労働基準法が、極めて重要な役割を占めていることは、その制定の由来を考えれば、おのずから明白です。

 さて、労務管理、とくに労働条件の管理にあたって、労働基準法で定められでいる労働条件の具体的基準を理解し、取り入れていかねばならないことは当然として、ここで注意しなければならないのは、労働基準法できめられている基準は、労働者の待遇についての最低限を規定したものであり、したがって中小企業といえども、実際の雇用条件は少なくともその最低限にまで達することが必要であると同時に、さらにそれ以上になるように不断の努力がなされなければならないということです。

労働基準法がその第一条において「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」と規定しているのも、まったくこの趣旨によるものです。

 また、労働基準法は労働条件の具体的基準を定めているほか、労働条件決定の基本的な考え方を明らかにしているものとして、第1条「労働条件の原則」第2条「労使対等の原則」第3条「均等待遇」第4条「男女同一賃金の原則」などがあり、また封建的な労働関係を排除するものとして第5条「強制労働の禁止」第6条「中間搾取の排除」、第16条「賠償予定の禁止」第17条「前借金相殺の禁止」第18条「強制貯金の禁止」、第69条「徒弟の弊害排除」等の規定が設けられていることにも留意する必要があります。

 これらのことは、労働者を使用して事業を経営していく人は当然知っていなければならないことであり、近代的労務管理の第一歩でもあります。

 このように労働基準法の個々の規定を理解し、労務管理を行うにあたってこれを取り入れていくことが、極めて月なみな結論ですが、これまでの実情からみて必要かつ重要なことであるといえましょう。

一級労務管理士  阿 部 善 也